16 October 2026

Schedule

活動予定

2026年

11月16日(月)カッキートリオ
19:00(開場18:30)
みんたる(札幌市中央区北1条西20丁目3-7/011-756-3600)
¥3,000(1ドリンク込み)
柿崎さとみ(うた)、小松﨑健(ハンマーダルシマー)、中島康宏(リュート)

12月19日(土) ヴィオラ・ダ・ガンバとリュートの響き
15:00  (開場14:30)
STUDIO kamokamo (札幌市南区真駒内幸町1丁目1-15)
¥2,000(20席限定、要予約)
布施久美子(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、中島康宏(リュート)


14 October 2026

Nico van der Waals

僕のメインのリュートを作ってくれたリュート製作家Nico van der Waals (ニコ)が、つい先日亡くなったと知りました。昨年会った時には、90歳近い年齢とあってさすがに少し弱った印象を受けましたが、それでも新作リュートを手掛け、ワインを飲みながらピザ丸々1枚にデザートまでペロリと平らげる姿も見ていて、まだ全く実感が湧きません。

ニコに初めて会ったのは、13年前、初めて師匠シグルンのイタリアでのマスタークラスに参加した時でした。会場であるシグルンの家に到着して、ダイニングに案内されると、そこにちょこんと座っていたのが、彼女のパートナーのニコでした。挨拶を交わすと、「わしゃリュート作るんじゃ」と名刺をくれました。まだ全くのリュート初心者で、製作家の名前もさっぱり知らなかった僕は、「へぇー、趣味で作ってるのかなぁ」などと呑気に構えていました。物静かで控えめながらも、お茶目でどこか飄々とした彼がすぐ好きになり、それから1週間は毎日のように「面白いおじいちゃん」の隣でご飯を食べていた気がします。

マスタークラスをすっかり満喫して帰国した後のある日、布団の上で寝転びながら、ぼんやりリュートCDのブックレットを眺めていると、録音に使われた楽器の製作者としてニコの名前が目に飛び込んできました。寝ていた体が文字通り宙に飛び上がって、慌てて他のCDを見ると、彼の名前がそこら中から、当時の愛聴盤だったStingのダウランド・アルバムからまで、ポロポロ出てくる…。こんな人の隣で、僕は何も知らず毎日パスタやピザをパクついていたのか…と血の気が引きました。

それからようやく、彼が現代のリュート製作の基礎を築いた人だったことを知りました。18世紀で一度絶滅したリュートは、20世紀前半までほとんど空想の楽器で、適当に作られていた。1960年代頃から、「本当のリュートはこんなはずじゃない」と考える人が出てきて、各地の博物館などに保管されている楽器を調べ回り、製作方法を研究し、本格的に復興する試みを始めた、その数少ない人たちの一人がニコだったのでした。プロ製作家としては、たぶん彼が一番長く作り続けたのではないでしょうか。そのような人に垣根なく会えてしまうという古楽の世界のフラットさにも、改めて魅力を感じることになりました。

リュートの製作もしたかった僕に、手始めに作ったバイオリンを見た上で、ニコは一度「習いに来ても良いぞ」と言ってくれたことがありました。でもビザ(滞在許可)をどうやって取ろう、彼にもシグルンにもおんぶに抱っこで迷惑をかける…などいろいろ躊躇し、解決しきれず、話は窄んでしまいました。結局、当時の僕はまだ覚悟が足りなかったのだと思います。彼の子どもは楽器製作の道に進まなかったし、唯一の弟子はチェロ製作家になり、彼が半世紀以上かけて培ってきたリュート製作の技は失われてしまいました。千載一遇のチャンスに、何としてでも習うという当然の選択をできなかった自分の未熟さが情けなく、恥ずかしい。後悔しかありません。

製作家としての彼についてよく思い出すのは、半世紀もの間第一線で活躍してきながら、なおもアマチュアのリュート製作家が書いた本を熱心に読んでいた姿。昨年会った時も、「トライ&エラーを繰り返してより良い物を作るようにする、それしか道はない」というようなことを力説していました。唯一の弟子が「いかに正確に作るかを学んだ」と言ったらしいその技術はもちろんですが、常に学び上を目指す圧倒的な情熱が、彼を一流たらしめたのだろうと思います。「弟子はチェロ職人になったから儲かっとる。わしゃリュートなんぞ作っとるから稼げんままじゃ」と事あるごとに冗談を言ってきたのは、いかにリュートが好きで人生を懸けているかの裏返しだった気もします。

ニコには、ただその信頼する人柄でリュートを注文しました。ローズなどは違うけれど、シグルンのものとほぼ同じの兄弟楽器。昨年見せたら、「お、オープンな音じゃの。何をしたか知らんが、よう育っとるわい」と評価してくれ、とても嬉しかった。亡くなった今、彼の楽器を弾けることのありがたみと重みが、より一層増してきています。大切に弾いていかなければ。

行ける時に行き、会える時に会っておこう、と昨年思い切ってイタリアへ行ったのは、つくづく良かった。お昼はシグルンはあまり食べないから、いつもニコと2人で彼の好きなキュウリとリコッタのサラダを作って、僕は帰国後も暫くキュウリにはまってしまった。もう一度、一緒に作って食べたかった。シグルンは、まさに今日からドイツの地元でマスタークラスを開く予定だったけれど、どうしているだろう。今回行っていたら、ニコに一目でも会えただろうか…。まだまだ、いろんな思いが湧いてきます。

ニコ、あなたに会えて本当に幸運でした。どうか安らかに。

坂を登るニコ(右)。2025年5月、サン・レオにて。

24 September 2026

9月23日

少し前、気持ちが昂って深夜に投稿、翌日読み返してちょっと恥ずかしくなり引っ込めてしまいました。文章を書いて発表するのは難しい…。目にした方がいらっしゃったら、申し訳ありません。

昨日は、『古楽の扉』コンサートでした。4年前、ヴィオラ・ダ・ガンバの布施久美子さんの繋がりで、歌い手の上坂美穂子さんと3人で共演したことをきっかけに、翌年からリコーダーと歌の重野久美子さんも加わって、4人で毎年開催してきたコンサートです。

今年も4人開催ということで進めていましたが、やむを得ない事情により布施さんが出られなくなり、3人での開催となりました。突如大黒柱を失い、何とも心許ない3人…。少し曲を入れ替え、僕のソロを増やし、リハでは喧々諤々(?)として、何とか乗りきりました。

本番は、予想の5割増ぐらいの数のお客さまがお越しくださり、温かく見守って頂きながら、盛況のうちに終了しました。10代ぐらいの若い方もいらっしゃり、嬉しい。僕は20代半ばでリュートを始めてやっと古楽の世界に入りましたが、もっと早く古楽を知っていたら良かったと本当に思います。リュートやグレゴリオ聖歌などの存在だけは10代の頃から一応知っていたものの、ギターやロックなどに夢中なあまり、古楽というジャンルの存在すら全く思いもよらなかったのです。

最近は公の演奏活動がちょっと少なくなっていますが、30年後ぐらいには、リュートが誰もが知っている楽器になっているように、古楽が普通に聴かれる音楽になっているように願いながら、これからも地道に活動していきたいと思います。


今日の1曲
Enigma  "The Child In Us"
たぶん多くの人がそうだったように、僕がグレゴリオ聖歌を知ったきっかけは、90年代に一世を風靡したEnigma(この曲では、1:12あたりからグレゴリオ聖歌が使われています)。音楽に目覚めた中学生の頃から大ファンでした。好きすぎて、中心人物Michael Cretuの出身地、ルーマニアのブカレストに行ったことも(温かい人ばかりの素敵な街で、調子に乗ってカメラとギターまで買ってしまった…)。こういう音楽を作ってみたくてシンセサイザーも手に入れたけれど、もともとの機械オンチ、できたのは電源スイッチのオン・オフぐらい。早々に才能のなさを悟り、その反動も理由の一つとなって、リュートという思いきり古いアナログな楽器に手を出したのでした。その挫折は未だに少し残念ですが、何だかんだ、やっぱり最後はリュートを選んで良かったと思います。


21 August 2026

『OKHOTSK ー終わりの楽園ー』&『コウスキィ2026夏』

先日は、北海道出身でチェコを拠点に活躍する人形劇師・沢則行さんの劇『OKHOTSK(オホーツク)』と『コウスキィ』を観てきました。人形劇なんてほとんど無縁の世界でしたが、ヴィオラ・ダ・ガンバの布施久美子さんが『オホーツク』の音楽を担当していて以前より話を聞いており、興味津々覗いてみました。

『オホーツク』は、オープニングからその美しい世界に引き込まれました。演技と、スクリーンに映し出される切り絵やリアルタイムで作り出される砂絵、OHPの映像に効果を与える工夫の数々、それらが一体となって流れる世界。昔切り絵が好きだったこともあり、感銘もひとしおでした。そしてそこに入ってくるバロック音楽…正直、古代のオホーツクが舞台の物語に、バロック音楽がこれほど合うとは思いませんでした。さらにそれが生演奏。録音が使われた場面もありましたが、やはり生演奏では劇場内の空気が違うのです。その後も次々と出てくる人形たちの美しさや、人形浄瑠璃の人形遣いの方3人がまるで1人のように動くさまなど、素晴らしかったです。また、たくさんの人がそれぞれ全く別の役目をこなして1つの舞台を作り上げる緊張感と一体感は、生だからこそ感じられる醍醐味と思いました。少し前に沢さん監督の子ども劇も観たのですが、その時は上演時間の2倍の長さを観たような濃さ、今回は、上演時間の2倍の長さ浸っていたいと思う世界でした。

終演後、ミーハー丸出しで沢さんにサインを頂き、肩を組んで一緒に写真も撮ってもらいました。そのがっしりした肩から、沢さんの人生が伝わってくるようでした。

ソロのパフォーマンス『コウスキィ』は、短いお芝居のコンピレーション的舞台で、ユーモラスなものから、グッとくる美しいものまで様々観られました。切り絵・影絵による「赤ずきん」や、人形を使った「人魚姫」、そして客席から出されたお題で即興で演じた「精霊流し」などは、特に美しく素敵でした。即興は、同じお題でその場でAIに作らせた動画の上映もあり、それはそれで面白く、うまくできていましたが、やはり生身の人間によるお芝居は超えられないと感じました。こちらも1時間の上演時間はあっという間に過ぎ、ぜひもう少しいろいろ観てみたかったと思いました。


沢さんの拠点であるチェコには、リュート修行でヨーロッパに渡ったばかりの頃に一度旅行で訪れました。当時住んでいた街がどうも馴染めず、現実逃避の気持ちでプラハに着いたら、現地の空気や人々の柔らかさに感動したことを覚えています。チェコは人形劇が有名と聞いて、劇場にも行ってみましたが、チェコ語の劇にみんなが爆笑する中、僕は独りポカンとするばかり。人生でそれ一回きりだった人形劇の世界でしたが、十数年の時を経て扉を開く機会が来たことは、何だか不思議で嬉しい気がします。

こんな素敵に輝く人たちや世界を目の当たりにしてしまうと、気持ちが上がることもあるけれど、逆に自己嫌悪に陥ることもある…。今回も少し沈んでしまいましたが、気を持ち直して、今日は久しぶりに、諸々の事にかまけて放置していたビウエラ製作に取り組みました。今はなかなか製作に集中できない環境ですが、やっぱり、物作りをしている時間は一番落ち着くかもしれない。次は表面板を接着して、ついにボディが出来上がるはず。


03 August 2026

8月1日

一昨日は、ダルシマーの小松﨑健さんとのデュオで、「留美ととりふね」さんにお誘い頂いてのジョイントライブでした。

健さんとは古いお知り合い、僕は初めましての留美ととりふねさんは、自称プログレッシブ・シャンソンのユニットだそう。本番まで、1つご紹介頂いた動画以外あえて演奏を聴いていませんでしたが、勝手に(すみません)思い描いていたよりもずっと優しい音楽と雰囲気で、安心して聴けました。ボーカルとりふねさんの書く歌詞は文学的で、曲はたぶんどうにか書けても、歌詞が全く思い浮かばない僕としては、素敵な歌詞を書けるって本当にすごいと思います。ギター伴奏の留美さんは、クラシックギターの経験は特にないらしいのに、どうしたらあんなに弾けるのだろう?と思うばかりでした。

健さんと僕のデュオ(デュオ名「やすけん」!)では、ルネサンス、アイルランド、北欧のレパートリーから演奏しました。いつも良いなぁと思って聴いていた北欧のレパートリーが増えてきたのは嬉しい。個人的には反省点がいつも以上に多かったですが、おかげでまた少しリュートのことを知れた気がしたり、今後の前進に繋がるものだったと思います。失敗なくして成功なし。

終了後、共演の御三方の話題は昔の札幌の音楽シーンについて。僕がリュートを始めてもいない頃のことだったり、キャリアの長さを感じました。僕はまだまだヒヨっ子。

お越しくださった皆さま、ダイマの久美さん・直美さん、留美ととりふねさん、健さん、ありがとうございました。


今日の1曲
渥美清『男はつらいよ』
前回の投稿で好きな映画について触れましたが、他はと言えばこれ。笑いと涙満載、これを超える日本映画はあるだろうか?未だに地に足がつかない人生なのは、きっと物心ついた頃からこのシリーズを見ていたから。寅さんがまだこの世にいた時代に生まれて良かった。

今日のもう1曲
Jonathan Larson "Seasons of Love"
この際、好きな映画トップ3一挙公開。3つ目はミュージカル映画『Rent』。何も期待してなかったのに、オープニングのピアノで一気に引き込まれ、2時間釘付け。見終わった時には、僕は別人になっていた。Jonathan Larsonの音楽が、信じられないほど全曲素晴らしい。動画は、"Seasons of Love"と"Rent"2曲を含む、映画冒頭10分。続き、見たくなりませんか?

30 July 2026

7月28日

一昨日は、みんたるにて『古楽の夕べ』ライブでした。
きっかけは、年に一度古楽コンサートでご一緒している上坂美穂子さんからのリクエスト。7月末に古楽好きの友達が遊びに来るので、リュートや古楽を聴ける機会を作ってくれないか、とのことでした。ちょうど僕も7月末が空いているなと思っていたので、古楽専門の方で最近共演がなかった中村会子さんをお誘いし、開催となりました。

本番当日は、直前にトラブルが起きたり、熊本の地震のニュースを見てしまったりで、微妙な気持ちのまま開演。何とか演奏に集中するようにしました。今回も、ルネサンスを中心に、イタリア、スペイン、フランス、イギリス、各国の曲を数曲ずつ演奏するスタイルにしました。こう並べて聴くと、国ごとの音楽の違いがよく分かる気がするし、お客さまにもそれを感じて頂けたのではないかと思います。

今回も予想以上に多くのお客さまがお越しくださり、また、長引いてしまった本番も終始温かく見守ってくださり、本当に感謝です。共演の会子さん、体調不安もある中の長丁場お疲れさまでした。みんたる・みかよさん、そして飛び入りで歌ってくださった上坂さんと、お友達の森下泉さんも、ありがとうございました。

今日の1曲
Glen Hansard "Say It To Me Now"
今朝ニュースを眺めていたら、アイルランドのミュージシャン・俳優のGlen Hansardが交通事故で亡くなった、と目に飛びこんできた。彼とMarkéta Irglováが主演したアイルランド映画『Once』は、ずっと僕の好きな映画トップ3に入っている。映画内の曲はFalling Slowlyが圧倒的に有名だけど、オープニングのこの音楽と映像も何ともいい。昔、僕はアイルランドでギタリストになることを夢見て現地に渡ったけれど、上手くいかず、でも何かしなければと時々路上でギターを弾き、このシーンを思い浮かべて、この場所でも何度か弾いた。この時の挫折経験がなかったら、リュートを手にすることもなかった。まだ56歳、あまりに突然で、早すぎる終わり。

14 July 2026

7月11日

先日の土曜日は、『ヴィオラ・ダ・ガンバとリュートの響き』コンサートでした。
このコンサートは、僕がこれまで重いコンプレックスを抱えて敬遠してきた通奏低音に、ついに腰を据えて取り組もうと、ガンバ奏者の布施久美子さんをお誘いして実現したものでした。

布施さんは、僕が札幌で最初に繋がったミュージシャン。まだ札幌をよく知らない頃に、何かとコンサートの案内をくれたり、お世話になり続けている小松﨑健さんなどに紹介してくれたのも、布施さんでした。この方なくして、札幌での僕の音楽生活はどうなっていたか分かりません。同じ古楽というジャンルに属し、僕が通奏低音コンプレックスを解消するきっかけもくれた恩人です。

そんな方と2人だけで一からつくるコンサートは、知り合って4年半にして初めて。楽しかった!もっとも、キャリアが段違いの布施さんに、言い出しっぺの僕が頼ってばかりでしたが…。

当日はあいにくの雨模様、近くで花火大会も開催される日で混雑していましたが、特別にキャンセル待ちの方までお越し頂け、満席以上の盛況でした。会場のkamokamoは、金工工房もある素敵なギャラリー。ブロック造りの壁に、程よく音が響きます。

プログラムは、僕が慣れているダウランドから始まり、オルティスなどを経て、最後はマラン・マレの組曲。温度・湿度の影響もあって楽器が安定せず、本番中のチューニングにかなり時間を取ってしまいましたが、お客さまには温かく見守って頂き感謝です。

おおむね好評頂けたようで、今回できなかった曲、新しくやってみたい曲などもあり、また12月にデュオ・コンサート開催予定となりました。これまた楽しみ。

お越しくださった皆さま、会場kamokamoさん、そして布施さん、ありがとうございました。


今日の1曲
atmos bloom "It's Enough"
ちょうど投稿を書いている時に、お気に入りチャンネルi'm cyborg but that's okからの動画を見つけて、初めて知ったバンド。かっこいい。相変わらず音楽と映像の組み合わせが絶妙で、まるで公式ミュージックビデオ。


07 July 2026

7月5日

一昨日は、カッキートリオのライブでした。歌の柿崎さとみさん(カッキー)とハンマーダルシマーの小松﨑健さんとのトリオ、僕にとっては、実は一番ライブが多い組み合わせかもしれません。会場は、狸小路にある喫茶店ガッチャ。狸小路の日曜昼下がりの賑やかさに、ちょっとびっくりしました。お越しくださった皆さま、ガッチャ・鈴木さん、柿崎さんに健さん、ありがとうございました。

プログラムは、イタリアのフロットラやヴィラネッラから始まり、少しバロックを挟んでダウランドへ、締めはアイリッシュ。フロットラは師匠の得意分野であり、僕も特に追求したい分野ですが、取り組むほどに分からなくなってきてしまう気がする…。一生勉強です。

常々、古楽にハードルを感じてほしくないと思いながら演奏をしているのですが、まだまだそのハードルを取り払えない印象があり、歯痒い。歌の内容は、ただ恋人の浮気を嘆いているだけだったり、現代のポップスと何ら変わらないのです。


今日の1曲
Pomme  "En cavale"
いつか自分は、こんなふうに楽器1本とカバン1つ背負って放浪する生活をするのかな…と時々少し不安な気持ちにはなるのだけど、同時に、人生で一度ぐらいそんな生活をしてみるのもいいだろうなぁ…と思う。とりあえず、この音楽も映像もすごくかっこいい。


25 June 2026

2026年6月

6月11日
フェアトレード雑貨店みんたるにて、ゲストに柿崎さとみさんをお招きし、リュートソロ+歌のライブでした。
長年札幌市北区の北大近くにあったみんたるですが、中央区に移転し先月オープン、新しい店舗での初めての演奏でした。当日は、みんたる常連の方々を中心に続々集まってくださり、大盛況。話し下手の僕に代わって、40年近く世界各地で音楽を教えてきた柿崎さんが盛り上げてくださり、助かりました。住宅街の中にある新店舗でもライブができる、と分かったのも良かったです。

6月14日
スープカレーのお店Jack in the Boxにて、ハンマーダルシマーの小松﨑健さんとデュオライブでした。
リハーサルから緊張するほど2人でのライブは久しぶりと思ったら、前回は3年半も前のようでした。そんなこともあってか、こちらも予想以上にたくさんの方がお越しくださり、感謝感激。打ち合わせていないのに、健さんと僕の当日の衣装が、上から下から、インナーのシャツまでほとんど同じ、というミラクルも。憧れだった北欧やアイルランドの曲なども弾けて、嬉しいライブでした。

6月22日
一風来にて、ソロライブでした。
1週間ほど前にたまたま貸してもらったカプスペルガーとピッチニーニのCDに触発され、今回はカプスペルガー特集としました。人としても興味のある彼の曲、好きなのですが、一筋縄ではいかないものもあったりして、普段演奏する曲が固定されてしまっていたので、少しでも殻を破れたら、と取り組んでみました。力は出しきったつもりですが、鬼才の曲を凡才が弾きこなすには、まだまだ修行が必要だと痛感。これからも弾き続けます。

今月は、本番3つとそれぞれのリハーサルや個人練習、さらに来月の2つのライブのリハーサルもあり、僕にとっては今までで一番凝縮された1か月だった気がします。一緒に演奏してくださる方々、聴きに来てくださる方々、演奏場所を提供してくださる方々、関わってくださる全ての方に本当に感謝です。

今日の1曲
Mari Jürjens  "Paradiis"
よくある質問「無人島に1枚だけアルバムを持っていくなら」。聞かれてもとても選べないけれど、3枚選べるなら、エストニアのシンガーソングライターMari Jürjens (旧姓Pokinen)の『22』は入るかもしれない。レコードショップバイト時代に、マニアックなお客さんが買取査定で持ってきた中に入っていた。ジャケットに惹かれて聴いてみて、衝撃。このアルバムがきっかけでエストニア旅行に行き、やがては住んでしまった、と言っても過言ではありません。激しいものやポップなもの、いろいろな音楽が好きで、そのどれを聴いても最高と思うけれど、リスナーとしていつも最後に行き着くのは、静かに、良い意味でただそこに存在するだけのような音楽。


01 June 2026

5月30日

先日は、ブリテン諸島のトラディショナルな歌を中心に演奏するFine.さんとのジョイント・ライブでした。お越しくださった皆さま、会場ダイマの久美子さん・直美さん、そしてFine.の荻野さん・二津さん、ありがとうございました。

本番は、それぞれのソロと共演が3分の1ずつ。
Fine.さんは、歌とハンマーダルシマーという、なかなか他にはなさそうな構成。二津さんの素敵な歌詞・歌声と、それを支える荻野さんのダルシマー、この2人でしか出せない世界があると思います。
共演では、僕の好きなEleanor of UsínやDown in the willow gardenもできて嬉しかったです。
僕のソロは、スコットランドやフランス関連の曲を。今回の個人的イチオシは、僕の特に好きな曲の一つであるロベール・ド・ヴィゼーのシャコンヌ。元々テオルボのための曲で、楽器がなければ弾けないな…と長年弾いていなかったのですが、ほんの2週間弱前に突然、ルネサンス・リュートで弾けるかもしれないと思い立ちアレンジ、今回早速お披露目しました。結果はまだまだ練習が必要と痛感しましたが、好きな曲を弾くことができるようになり、ルネサンス・リュートの新たな可能性も見つけられ、良かったです。

ビウエラ製作は、1か月で1つの工程ぐらいの超スローペースで未だ進行中。先月はローズができました。子どもの頃切り絵が好きだったのですが、薄い木の板を切るって難しいんだな…。課題だらけで、写真を載せるのも少し恥ずかしいですが、初めてならこんなものか。次からもっと良くなるはず。


今日の1曲
Cafuné  "Tek It (I Watch The Moon)"
そんなに聴いているわけではないけど、気になるバンド。最近またYouTubeに上がってくるようになったので、ぽつぽつと聴いてます。この音楽からこんなアニメーションを作り出せる人たちの創造力もすごい。


19 May 2026

5月14日

先日は、おなじみの一風来にて、ソロライブでした。お越しくださった皆さま、一風来・成田さん、ありがとうございました。

今回は、リュート音楽に馴染みがないと分かりにくいような曲が弾きたくなり、そんな曲がほとんどになりました。聴いてくださった方がどのように感じられたか、少し不安はありますが…でもこの楽器、音楽を愛する者としては、取っ付きやすい曲だけでなく、もう少し深い部分までぜひ知ってほしいとも思うのです。

本番は久しぶりに、立って演奏をしてみました。普段は、何となくお客さまとの距離や、共演の方との兼ね合いなどで、座っての演奏が多いですが、師匠の元では立奏が多いし、元々ロックをやっていた身としても、立っての演奏は結構しっくりくるのです。

本番の直前、ライブを知らずにご飯だけ食べに来られた方がいらっしゃいました。チャージを頂かない投げ銭制なので、ライブは気にせずお食事だけどうぞ、と入って頂いたのですが、食べ終えて演奏途中で帰られる際に、サッと投げ銭(しかも高額!)を入れていってくださいました。後から聞いた話では、スマホでリュートのことを調べてもいたとのこと。たまたまフラッと入って、聴いて、何か感じて頂けたなら、この上ない喜びです。これぞ投げ銭ライブの醍醐味。

また来月、6月22日(月)12時より、一風来ソロライブをさせて頂きます。

今日の1曲
The Macrobats  "I'll Do It Again"
こんなに素晴らしい曲をつくっているのに、今時、検索してもあまり情報が見つからないバンド。でもそんなところがまたカッコいい。このチャンネルi'm cyborg but that's okは、管理人の好きな音楽を好きな映画などと組み合わせて紹介しているようですが、とにかく曲や動画を選ぶセンスがすごい。


30 April 2026

4月25日

先週土曜日は、度々お世話になっているブリティッシュ・トラッド・ユニット、Fine.さんのレコ発ライブに、レコーディングメンバーとしてゲスト出演しました。

ゲストで録音に参加してほしい、とお声をかけて頂いたのは、もう1年近く前だったでしょうか。当時は僕の楽器に不調があり、これから長期で修理に出すというタイミングで、録音日時の調整などご迷惑をおかけしてしまいました。

そうして完成したFine.さんの新譜『日毎夜毎』。一目見て、まず暖かい素敵なジャケットに惹かれますが、中の音楽は、まさにその空気がそのまま音になったよう。ジャケ買いしたら当たるアルバムです。先週のライブもそのままの、むしろ生演奏によってより暖かい雰囲気に包まれた気がします。

もっぱら生演奏派の僕にとっては、これが人生初の公式の録音でした。公の媒体に自分の音を使って頂いているのを聴くのは、やっぱり感慨深いものがあります。他のゲストの方々は大御所揃いだし、こんな機会に参加させて頂けたのは本当にミラクルでした。

Fine.さんとは来月末にも、ジョイントライブでご一緒させて頂きます。
5月30日(土)
open 14:30 / start 15:00
ガンゲット・ダイマ(札幌市中央区南3条東1丁目6)
¥2,500 + オーダー
Fine. (二津美和子: 歌、荻野光生: ハンマーダルシマー)、中島康宏(リュート)

今日の1曲
Night Tapes "Television"
僕が好きで演奏するのはアコースティックな音楽、でも憧れるのはエレクトロ二ックな音楽。人間は無いものねだり。イギリスのバンドですが、ボーカルのIirisはエストニア出身。まだ母国でソロ活動していた頃に初めて聴いて、すごい人がいると思った。やがて僕はエストニアに住むことになり、一度手の届くような距離で、彼女のライブを見たことがあるのは良い思い出です(お客さんもまばらな、何か音楽以外の小さなイベントで、一人で演奏していた)。あるインタビューによれば、普段もバンドメンバーで一緒に生活しているとのこと。この絆というか、やっぱり、最終的に音楽をつくるのは音楽以外の部分なんだろうな。


07 April 2026

4月4・5日

先日の土・日曜日は、『東風吹く庭で』と題されたコンサートに出演しました。当初、北海道の東は釧路から、リコーダーなどを演奏される村雲雅志さんをお招きし、ダルシマーの小松﨑さんとガンバの布施さん3人でのコンサートが計画されたようですが、せっかくなのでリュートも、と誘って頂きました。

初めてお会いする方、初めて演奏する会場、初めての連日公演、初めて弾く曲が半分以上(難曲多数…)と、僕は初めて尽くし。さらに御三方の影響力で、宣伝する間もなく、早くも2か月前に満席に。2か月間、針のむしろに座るような気分でした。

本番は、毎度ながら、崖っぷちを目隠しで突っ走って気がついたらゴールしていた感じ。いろいろ考えたり味わったりする余裕はほとんどないのですが、今回はそれでも少しだけ冷静でいられた部分があり、コンサートを通して鍛えられたような気がします。終演後、お客さまの一人が「リュートって、いつも音が小さいわけじゃないんですね」と話しかけてくださり、とても嬉しかったです。僕からすると、リュートはある意味爆音の楽器です。そんな真の姿をもっと知って頂けるように、精進を続けたいと思います。ただあくまで本当の魅力は、小さな音で、少ない音数で弾いてカッコ良いところだと思いますが。

本番前日に初めてお会いした村雲さんは、凄腕リコーダー奏者と聞いてビクビクしていましたが、音楽への愛とユーモアが溢れる方で、ほっとしました。実はお医者さんであり、手塚治虫のブラックジャックの大ファンだった僕も、音楽のできる医者になれたら良かった、と思いました(理数科目が絶望的だった)。リュートを弾いていなければ、この3人の誰にも会うことはなかった、そんなリュートがそっと繋いでくれるご縁の不思議さとありがたみをひしひしと感じた3日間でした。コンサートもおおむね好評頂けたようで、次回は釧路?と夢を膨らませながら解散となりました。レッドーベリースタジオの飯塚さんも、ありがとうございました。今回のコンサートには理想的な素晴らしい響きの会場でした。

昨年から続くビウエラ製作は、一時期中断していました。学校に質問を送るのですが、どう聞いてもちぐはぐな答えが返って来て、すったもんだすること3週間。ついに僕の方が根負けして、モヤモヤを残したまま作業を進めることにしました。この前やっとボディの裏板を接着、一気に楽器らしくなって、ちょっと感動。

今日の1曲
TOCCHI  "これだけで十分なのに"
昔少しだけバイトしていた中古レコードショップの店長がギャングスタ・ラップ専門で、いろんなラップを仕事中聞かされていた。そんなこともあって、未だに何も知らないけれど、ラップへの興味だけは持ち続けている。札幌出身ラッパーによるこの曲、最初はBASIのリミックスで知った。コロナ禍真っ只中の異国の地で、知り合いもいない新しい町に来て、リュートからすっかり離れ、ただ生き延びるために安時給の工場仕事に身を費やしていた、そんな時期に出会った。この歌は強がりなんかじゃない、本心です。


21 March 2026

3月15日

先日日曜日は、小樽のレコードショップ「音とこだま」さんにて、ソロライブでした。こちらでは、毎月1回レコードやCDを聴く会が開かれているそうで、僕の生徒さんが常連さんというご縁で、その会の特別(?)版としてお声がけ頂きました。小樽では初めての演奏で、お客さまも全員、僕のソロは初めてだったと思います。音楽好きの方々が集まるということで、解説をいつもより長めにしてみました。準備はしていましたが、いざ話し出すと肝心な事を忘れたり、考えていなかったことが急に思い浮かんで口走ってしまったり…トークも磨かなければ。曲はイタリアをメインで、その他ヨーロッパ主要国のレパートリーを一通り。普段ソロは1時間ぐらいのことが多いですが、気がついたら1時間半を超えていました。長丁場を皆さん温かく聴いてくださり感謝です。淘汰された古い音楽に、少しでも魅力を感じてもらえたなら良いのですが。何となくアイスランドのレコードショップを思い出しながら演奏しました。

今日の1曲
Angine de Poitrine  "Mata Zyklek"
最近話題になっているらしい2人組、その名も「狭心症」。正直、音楽も見た目も、こういうスタイルは一番苦手な部類。でもこのテクニックと、徹底的に作り上げられた独自の世界は凄い(インタビューで話す言葉まで独自の言語!)。何より、このスタイルでこの音楽をやるには、2人の間に強い信頼があって、しっかり同じベクトルを向いていないと難しいと思う。きっとそれが一番の魅力の源なんだろう。カナダ・ケベック州のバンドで、このライブはフランスということですが、あの巨大な帽子をどう運ぶのかすごく気になる。動画埋め込みが上手くいかないので、リンクを貼っておきます。
(追記:貼れるようになりました↓)


28 January 2026

1月21日

もう1週間経ってしまいましたが、先週21日はカッキートリオのライブでした。真冬の夜という外出しにくい時で、僕は事前に宣伝する余裕も全くなかったのですが、そんな中でもお越しくださった皆さまには感謝です。

前半はイタリアのフロットラを中心に。なぜかフロットラは演奏する方が少ない気がしますが、楽しい曲や美しい曲が多く、500年前の人々の息遣いが感じられるように僕は思います。ずっと探究を続けたい分野です。後半は今年没後400年のジョン・ダウランド作品を中心に。新曲で大コケしました…すみません。そんなミスも、その時その場にいなければ見られないのがライブの面白さです(開き直り)。

昨年から作っているビウエラは、学校とのやり取りがなかなかスムーズに進まず、大幅に遅れています。スペインはほとんど行ったことがないのですが、これがスペイン時間…?やっとボディとネックが繋がりました。

今日の1曲
Chesuqi  "The Blue"
ついこの前知ったアーティスト。ただただ、生まれ変わったら、こんな音楽と映像の才能とセンスを持っていたい。

17 December 2025

12月14日

先日のライブ、題して「静かな古楽のクリスマス」は、盛況のうちに終了しました。大雪も予想される中お越しくださった皆さま、フル回転でオーダーを提供し続けてくださったジャック・イン・ザ・ボックスの高倉さん、ありがとうございました。

今回演奏した曲のほとんどは合唱曲だったので、僕はアルト〜バスのパート2〜3声分をリュートに置き換えて弾きました。ルネサンス時代の人たちもきっと、一人では歌えない曲をこうやってリュートで弾いて楽しんでいたのだろうな、とアレンジをしながら想像しました。


今日の1曲
Giovanna Pessi & Susanna Wallumrød  "The Plaint"
ライブの中で、今回演奏したRíu ríu chíuは、アメリカのバンドThe Monkeesによる演奏もあることをお話しました。YouTubeでその動画を見てみると、500年前の人たちもまさにこんな感じで歌っていたのでは、と思えてきます。どうしてもクラシック音楽に分類されて、ハードルが高いと思われがちな古楽ですが、やっぱり昔のポップスなんだよなぁ…と僕は思います。このノルウェーのポピュラー歌手Susanna Wallumrødが歌うパーセルも素晴らしい。動画の埋め込みができないようなので、探してみてください。

18 November 2025

11月13日/ビウエラ製作/アイスランド語の日

先日11月13日は、一風来にて久しぶりのソロライブでした。
久しぶりだし、春に師匠に会って受けた刺激も形にしたい、と気合は十分。しかし、勢いのあまり背伸びをし、難曲・大曲を盛り込みすぎて、ちょっと空回りだった気がします。背伸びしなくてもカッコいい、というリュートの魅力も大切にしなければ…と思いつつ、たぶんまた冒険してしまいますが…。
お越しくださった方々、一風来・成田さん、ありがとうございました。

さて、先月から何ちゃって学生をしています。スペインのEscuela de Violeríaという楽器製作学校から通信で指導を受けながら、スペインのリュートであるビウエラを作っています。
進行速度はカタツムリ並みですが、ネックとヘッドはかなり出来てきました。次はボディ製作に移ることになると思います。

ビフォーアフター

まだまだ技術や知識が足りない上に、現状では製作環境(場所・時間・道具)もあまり整えられず、思うようには作業できませんが、手を動かして物を作るというのは、やっぱりとても楽しい。何とかこの1本を完成させ、これを足がかりに、さらに楽器を作っていけたらと思います。夢は大きく、リュートの師匠シグルンと、パートナーでリュート製作家のニコ、2人を合わせたような人間になりたい。

全く別の話になりますが、先日11月16日は「アイスランド語の日」だったそうです。僕は10年ほど前はアイスランドかぶれで、言葉もかじっており、一度は思い切って、現地の大学のアイスランド語学科に入学願書も出しました。当時はまだ郵送で、書類が締切を過ぎても届かない、ということで、あえなく挫折しましたが…。

16日は、アイスランド大使館によるアイスランド語学習に関するウェビナーがあると知り、視聴しました。メインでお話をされた3名の方々は、僕が願書を出したのとほぼ同じ頃に現地での留学を始められたようです。おそらく僕よりずっと若い方々だと思いますが、超難関の言語を身につけ活躍されていて、素直にすごいと思いました。しばらく離れていましたが、また言語を学び、現地にも行きたくなりました。

余談ですが、そのかぶれていた頃にアイスランドに行った際、たまたま一枚のアイスランドのフォークソングのCDを買いました。ジャケットには、演奏者として、僕のリュートの師匠シグルン・リヒターと同姓同名の別人と、なぜかその隣には、録音に使われているとは思えないリュートの写真が載っていました。その頃、僕は師匠と知り合って間もないか、名前だけ知っているかぐらいでしたが、後にこの偶然が後押しの一つとなって、師匠に学ぶことを決めたのでした。

今日の1曲
Reykjavíkurdætur  "Tíminn Tapar Takti"
初級者の安易な考えかもしれませんが、アイスランド語は風がささやくような言葉だと、初めて現地を訪れた時から思います。静かなアイスランドが一層静かな早朝に、見ているだけで胸が一杯になるレイキャヴィクの街並みの中で繰り出される、風のようなアイスランド語のラップ。歌の内容は分からないけれど、心が満たされる(追記:字幕をオンにすると英語訳が出てくることに気がついた。すごい)。音楽だけでなく他の分野でも、人口40万人に満たない国から、なぜ数多くの世界的な人たちが出てくるのだろう。

11 October 2025

Musica Antica a Monterone 2025

また久しぶりの投稿になりました。諸事情により、昨年末頃から音楽面含めていろいろと停滞しがちになっていたのですが、この2〜3ヶ月でだんだん物事が落ち着き、進むようになってきたので、これからまた音楽追求の人生に自分を引き戻していきたいと思っています。

さて、今や昔ですが、今年の4月末〜5月初めにかけて、リュートの師匠シグルン・リヒターが毎年イタリアで開催しているリュート講習会に参加してきました。停滞期間の真っ只中ではありましたが、次にいつ海外へ行けるか分からないこと、何より6年ぶりに師匠たちに会ってレッスンを受けたく、どうにかこうにか行ってきました。


開催場所は、イタリア中部にあるモンテローネ。人口100人にも満たないかのような、丘の上に静かにひしめく、小さな集落です。そこの建物の多くはおそらく500年ほど前のもので、足を踏み入れると、本当にタイムスリップしたかのよう。リュート初心者の頃から、僕はほぼ毎年参加していたのですが、コロナ流行前の2019年に行ったのが最後となっていました。

モンテローネ

シグルンに初めて会ったのも、この講習会でした。当時日本でリュートを始めたばかりだった僕は、ヨーロッパで学べたらなぁ…とネットを漂流しているうちに、彼女のウェブサイトに流れ着きました。イタリアの山奥でレッスンなんて、これは面白そうだ…と思って、見ず知らずの彼女に参加したい旨メールを送り、その時も2週間ぐらいの旅程で日本から訪れました。その時の体験は想像以上に深く心に残り、翌年、僕は彼女が普段暮らすドイツへ渡って、みっちり教わることにしたのです。

さて今回。
楽器持ちにとって切実な問題の飛行機は、キャセイパシフィックの千歳・ミラノ便(香港経由)でした。北海道から乗り換え1回で済む飛行機が予算内であると思わず、良かった。何よりも、リュートのような大きめの楽器を難なく機内持ち込みでき、本当に助かりました。これがなかったら行けたかどうか…!

ミラノ到着後はまっすぐ、電車でアドリア海沿岸の町リミニを目指しました。リミニは、電車が通るモンテローネ最寄りの町の1つで、町自体もとても好きですが、何より日本人の友人マサさんが勤めるホステルがあり、この辺りへ来る時は外せないのです。Sunflower Cityというその宿、リミニを旅行される際はぜひ。以前と何ら変わることなく温かく迎えてくれるマサさんと、コロナ禍を超えてホステルが続いてくれていたことが嬉しかったです。

Sunflower City Backpacker Hostel

リミニは何泊でもしたいところですが、後ろ髪を引かれながら、すぐに翌日モンテローネへ向かいました。
まず電車で南下してペーザロという町へ、そこからバスに乗り、一度乗り換えを挟んで計2時間近く揺られ、とうとう到着です。
丘の一番上にあるシグルンの家を目指して坂を登っていると、シグルンと、パートナーのニコ(リュート製作家Nico van der Waals)が迎えに出てきてくれていました。涙の再会…かと思いきや、2人を見た瞬間にこの6年間の空白はすっかり忘れ、何だかつい去年あたりも会ったような感じがしてしまって、何だかいつも通りでした。

モンテローネ入り口。左には唯一のバル。

丘の上へ

師匠宅への道。ちなみに上の回廊は現在バスルームになっているそう。

今回、僕はバスの関係で開催の3日前に着いていたので、到着翌日から特別にレッスンをしてもらいました。ソロ曲としては、カプスペルガーのトッカータ第2番を選びました。即興的な性格や強弱など、自分なりに考えたつもりでしたが、シグルンの手にかかると、そんなものをすっかり飛び越えた提案がどんどん出てきて、ほとんど別の曲のように変わるのでした。6年の間に自分の演奏が固くなっていたことが分かり、「ああ、表現というのはこんな感じだった…」と思い出すことができました。

裏庭にてコーヒーブレイク中。周囲はほぼ自然のみ。

期間を通して印象的だったのは、「もっと強く」と同じぐらい、「もっと弱く」という指摘が多かったことです。とにかく「音が小さい」と言われてしまうリュートをここまで弱く弾いていいのだろうか、と思ってしまう時もありました。でも、そこは喧騒とは無縁の場所にある、石造りの響きの良い部屋(元々の部屋は響きすぎるので、少し抑える工夫をしてあると言うほど)。リュートが弾かれていた500年前は、今より遥かに人は少なく、車など大きな音を出す機械類もなく(人の耳ももっと敏感だったのかもしれません)、まさにこのような環境が普通だったのではないか、リュートはこのような環境の基準から生まれて、このような環境で演奏されるのがベストであり、だからこそこんな表現ができるのではないか、と改めて思うのでした。そして、やっぱりいつかこんな環境を日本にも作れたら、とも改めて思いました。

今年の受講者は以前よりずっと少なく4人だけ、僕以外は全員ドイツ人でした。会えるかと期待していた常連の友人が不参加だったり、やっぱりコロナを境にいろいろ変化があったのではと思います。参加者のうち2人は、僕のドイツ遊学時からお馴染みの人で、再会できて嬉しかったです。

シグルンは最近はアンサンブル重視のようで、今回も全員でのリュート・アンサンブルが講習の中心でした。日本では、ましてやここ北海道では、コンサート1時間分の曲を5人で合奏できるような機会はなかなか無いので、良かったです。曲も、ルネサンスからモンテヴェルディのマドリガル、ヴィヴァルディのコンチェルトなどバラエティがあり、この点も良かったです。

エクスカージョン、ウルバニアのドゥカーレ宮殿へ

いつもですが、1週間の講習期間はあっという間に過ぎ去ります。食事と半日のエクスカージョン以外は、ネットもほとんど繋がらない環境で弾き籠り、気がつけばもう最終日のコンサートを迎え、終演後は打ち上げをして、今年も楽しく終了しました。

行く前は、精神・体力・金銭的に大丈夫かどうか、正直不安がとても大きかったのですが、結果としては良かったと思います。刺激を受け、久しぶりに新たなレパートリーの開拓も始められました。この6年間、どこへ行っても周りにリュート奏者がほとんどいない環境で、自分の立ち位置が分からなくなってきていましたが、そのリセットもできました。そして、会いたかった人たちに久しぶりに会うことができ、慣れ親しんだ場所をもう一度訪れることができて、良かったです。これを糧に、これからまた頑張っていきたいと思います。リュートを弾かれている方で、特にアンサンブルに興味のある方は、毎年イースターの時期辺りに開催されるこの講習会に参加されると、きっと有意義な体験になると思います。

モンテローネにて、小さくとも新たな一歩?

来月に1つ、小さなソロライブを予定しています。イタリアで受けた刺激を少しでも聴いて頂けたらと思っています。

11月13日(木) 12:00
めしカフェ 一風来(札幌市豊平区豊平2条2丁目1-8/011-795-1622)
要オーダー、他投げ銭制

23 March 2025

3月22日 Balladの世界

ここのところ投稿が止まってしまっていました。文章を書くということは結構好きなのですが、とにかく書くのが遅く、ついつい後回しにしてしまいます。この数か月は、内側に籠り、自分の音楽や自分自身と向き合いたかった時期でもありました。これからまたポツポツ書いていければと思います。

さて昨日は、日本バラッド協会主催の札幌でのコンサートに、トラッドユニットFine.さんのゲストとして出演させて頂きました。昨年夏のFine.さんとのライブにバラッド協会の方がお越しくださり、その場でぜひ来年のコンサートに出演を、とお誘い頂いたものです。正直「バラッド」というジャンルはそれまであまり意識していなかったのですが、たまたまその時演奏していた曲でそれにあたるものがあったようです。今まで何気なく弾いていたリュート曲で実はバラッドに分類されるものが多くあることも、それから知りました。

会場は、札幌軟石造りの古い倉庫を改装して作られた、北海道教育大学の施設のHUG。ヨーロッパの石造りの教会を思い出しました。その会場がほぼ満席となるほど多くの方々にお越し頂き、開演前は心臓の鼓動が自分の耳で聞こえそうなほどの緊張。とにかく演奏の土台部分を崩さず弾き通すことに集中しようと覚悟を決め、ここ暫く続いていた演奏の不調と極度の緊張の割にはベストを尽くすことができたと感じ、肩の荷が下りた気持ちでした。

ただ、僕は常々、リュート(およびアコースティック楽器全般)の演奏で一番大事なのは音色であり、そういった楽器や伝統的な歌などの「本当の」魅力を伝えるためには生音演奏しかないと考えているのですが、昨日のコンサートにおいては、そのことに少し意地になり過ぎてしまった気もします。ただ単に自分の主張を通すだけではいけない、と帰宅してから反省。その意味でも、得られるものがあった1日でした。

久しぶりの方々と何人もお会いし、話をして、元気を頂けたのも良かったです。

何か文章を書こうという時には、たいてい思うことがあり過ぎるのも遅筆の原因。今日はここまでにします。

今日の1曲
André Lislevand & Anna-Liisa Eller  'Kapsperger'
リュート界のスーパースターRolf Lislevandを父親に持つ、正真正銘のサラブレッド・ガンバ奏者André Lislevandと、エストニアのカンネル奏者Anna-Liisa Ellerの思いがけない組み合わせを、昨日偶然見つけました。エストニアは僕がこれまで一番長く暮らした海外の国であり、そんな国の楽器とのコラボとは何だか嬉しくなります。曲は、17世紀の鬼才リュート奏者Kapspergerが、自分自身の名前をタイトルにして書いたもののアレンジ。この曲にこんな要素があったのか!こんな風に弾けるのか!と目から鱗。久しぶりに衝撃と刺激を受けました。ラフな服装もいい。音楽でも何でも、みんなもっとラフに行こう…。

29 November 2024

11月25日、27日

 11月25日
一風来にて、歌の柿崎さとみさん、ハンマーダルシマーの小松﨑健さんと僕によるカッキートリオ、2回目のライブでした。
週初めでしたが、思ったより多くの方がお越しくださり感謝です。曲は初回ライブと同じくイタリアとイギリスのルネサンスを中心に。リュートの音が大きくなった、と評価を頂きました。音が小さいと言われがちなリュート、元はと言えば僕はそこに魅力を感じて始めたところもあるのですが、実際はそこそこ音の出る楽器だと思います。僕の師匠のシグルンは特に音が大きく、あるコンサートではあまりによく聞こえるので、スピーカーから出ているのかと思ったほど。ひ弱なイメージをどうにか払拭したいと取り組み続けてきたのが、ようやく少しずつ形になってきた気がしました。
カッキートリオ、ますます勢いに乗って、次回は年末12月28日、そして2月にもライブが決まりました。

11月27日
みんたるにて、マンスリーライブ第2回でした。今回のテーマはイングランドとしました。有名なダウランドをはじめ親しみやすい曲が多く、言語も英語なので抵抗感が少ない気がする地域です。僕も最初によく聴いていたリュートCDのうち一枚はスティングのダウランドだったし、練習する曲もイングランドものが多かったのですが、リュートに深入りするうちにイタリアやスペインの音楽に軸足が移っていき、イングランドのソロ曲はめっきり弾かなくなっていました。初心に帰るためにも、今月は密かにイングランド月間にしていたのです。

プログラムは、ダウランドはあまりに有名なので他の人たちをぜひご紹介したいと思い、最終的にリュート作曲家としてはダウランド以外に9人が揃いました。準備をしていて、こんなにたくさんいたんだ…と思いましたが、これでも網羅はできていません。準備しきれなかった曲もあり、今後も取り組んでいきたいと思いました。今回もたくさんの方がお越しくださり、感謝しかありません。もっと良い演奏ができるようにならなければ、とひしひし感じました。

今日の1曲
Imogen Heap  'Hide And Seek'
イングランド繋がりで。ただただマジカルな4分半。幼少期の両親の離婚経験を元に書いたと言われていますが、不幸な経験が素晴らしい芸術を産み他の人を幸せにする切なさを感じずにいられません。つい先日、詳細を忘れてしまいましたが、確かあるルネサンス時代の人の「芸術家はその才能で自分自身が癒されることはない」といった意味の言葉を目にしました。まさにそんな曲だと思います。